はっとりみつる / さんかれあ (1)

大雑把なあらすじはこうだ。

ゾンビ大好きな高校生・降谷千紘は、名門女子校に通う良家の子女・散華礼弥(さんか・れあ)と偶然出会い、彼女とともに死んだ生物を蘇らせる「秘薬」を生成する。しかし、父親の異常な束縛と偏愛に絶望した礼弥は、いまの生活から逃れるためにその「秘薬」を飲んでしまう。ゾンビとして生まれ変わった礼弥は人生で初めて手に入れた自由を喜び、ゾンビマニアの千紘もまた美少女ゾンビとの生活を楽しむ。しかし、礼弥の身体は死後硬直を開始し、腐敗へと少しずつ向かっていく----。

設定がひじょうにぼく好みだったので読んでみたのだけれど、実際におもしろかった。

あらすじに書いたとおり、ヒロインは一度死ぬ。つまりこれは、キャラクターとしてのヒロインが「傷つき、死ぬ身体」を持っていたということを意味する。そこからゾンビとして蘇らせることによって、こんどは「腐敗する身体」を与える。「傷つき、死ぬ身体」と「腐敗する身体」は、機能的にはどちらも同じ意味だといえるだろう。しかし、物語としては、ヒロインがゾンビになることで彼女の抱える「キャラクターとしての身体と生命」が有限なものであるということを、むしろ強調する。ヒロインがゾンビになるまで、彼女の身体性について主人公がまったく意識しなかったように、ぼくたちもまた、ヒロインがゾンビになることで、それを改めて認識する。言い換えれば、虚構(マンガ)の中でさらに虚構的な出来事(ゾンビ化)を経由しつつも、ヒロインの身体からは自然主義的なリアリズムが失われず、かえって浮き彫りになる。それはマンガという表現の持つ強度に由来するものなのかもしれない。

このように、『さんかれあ』は「腐敗する身体」というタイムリミットを与えられたヒロインと主人公が織りなすラブコメなのだけれど、こういった描写に対する倫理的な言及も作中に見られる*1。だから作者は無自覚にヒロインをゾンビ化させたわけではないと感じさせるし、その点も、この作品の今後を期待させるものだといえるだろう。

このマンガのこれからの展開が楽しみだ。

ちなみに、第1話はこちらのサイトで公式にフリーで公開されているので、興味を持たれた方はぜひ。

*1:さんかれあ』第1巻P.155の千紘と蘭子の会話を参照のこと